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第9章 (コリント前書}

 第五項 パウロ、生活上に自由を濫用せざりし事を説示す。

1 我われは自じ由いうの身みならずや、使し徒とならずや、我わが主しゅイエズス、キリストを見み奉たてまつりしに非あらずや、汝なんぢ等らが主しゅに在あるは、我わが業わざならずや。 2 我わが假令たとひ他たの人ひとに取とりては使し徒とに非あらずとするも、汝なんぢ等らには使し徒となり、其そは汝なんぢ等らは主しゅに於おいて我わが使し徒と職しょくの印いん章しゃうなればなり。 3 我われに問とふ人々ひとびとに對たいする我わが答たふ辯べんは其それなり。
4 然さて我われ等らは飮いん食しょくする權けんなきか、 5 他たの使し徒と等たち、主しゅの兄きゃう弟だい等たち及およびケファの如ごとく、姉し妹まいなる婦をんなを携たづさふる權けんなきか、 6 又また唯ただ我われ一人ひとりとバルナバとのみ勞らう働どうせざる權けんなきか。 7 誰たれか自みづから費ひ用ようを辯べんじて軍いくさに出いづる者ものあらんや、誰たれか葡ぶ萄だう園ゑんを植うゑて其その果みを食しょくせざる者ものあらんや、誰たれか群むれを牧ぼくして群むれの乳ちちを飮のまざる者ものあらんや。
8 我われ豈あに人にん間げんの通つう例れいに由よりてのみ斯かかる事ことを言いはんや、律りっ法ぱふも斯かく云いふに非あらずや。 9 即すなはちモイゼの律りっ法ぱふに録かきしるして、「汝なんぢ穀こく物もつを踏ふみ碾こなす牛うしの口くちを結むすぶ事こと勿なかれ」、とあり、神かみは牛うしの爲ために慮おもんぱかり給たまへるか、 10 之これを曰いへるは實まことに我われ等らの爲ためなるか、然しかり我われ等らの爲ために録かきしるされたるなり。蓋けだし耕たがやす者ものは希き望ばうを以もって耕たがやし、穀こく物もつを踏ふみ碾こなす者ものも其その果みを得うるの希き望ばうを以もってすべきなり。 11 汝なんぢ等らの中うちに靈れい的てきの物ものを蒔まきたる我われ等らなれば、汝なんぢ等らの肉にく的てきの物ものを刈かり取とるとも、豈あに大だい事じならんや。 12 他たの人ひと汝なんぢ等らの上うへに其その權けんを有いうするに、我われ等ら何なにを以もってか一層ひとしほ然しからざらんや。然されども我われ等らは此この權けんを利り用ようせずして、聊いささかもキリストの福音ふくいんを妨さまたげざらん爲ために、何なに事ごとをも忍しのぶなり。 13 汝なんぢ等ら知しらずや、聖せい職しょくを營えいむ人々ひとびとは[聖せい]殿でんの物ものを食しょくし、又また祭さい壇だんに事つかふる人々ひとびとは祭さい壇だんの分ぶん配ぱいに與あづかる。 14 斯かくの如ごとく、主しゅも亦また福音ふくいんを宣のぶる人々ひとびとが福音ふくいんに由よりて生せい活くわつする事ことを定さだめ給たまひしなり。 15 我われ斯かかる事ことを一いつも利り用ようせざりしに、而しかも之これを書かき送おくるは、斯かくの如ごとく爲せられんとには非あらず、其そは此この名めい譽よの點てんを人ひとに奪うばはるるよりは、寧むしろ死しするこそ我われに取とりて善よければなり。 16 蓋けだし福音ふくいんを宣のぶるも、之これを以もって名めい譽よとするに非あらず、我われは其その必ひつ要えうに迫せまれるなり。福音ふくいんを宣のべ傳つたへざらんは、我われに取とりて禍わざはひなればなり。 17 即すなはち快こころよく之これを爲なせば報むくいを得う、心こころならず之これを爲なすも、其その務つとめは我われに委ゆだねられたるなり。 18 然さらば我わが報むくいは如何いかなるものぞ、其そは福音ふくいんを宣のべて、人ひとに費つひえなく福音ふくいんを得えさせ、福音ふくいんに於おける我わが權けんを利り用ようせざる事こと是これなり。 19 蓋けだし我われは衆しゅう人じんに對たいして自じ由いうの身みなれども、成なるべく多おほくの人ひとを儲まうけん爲ために、身みを以もって衆しゅう人じんの奴ど隷れいとなせり。 20 ユデア人じんを儲まうけん爲ためには、ユデア人じんに對たいしてユデア人じんの如ごとくに成なり、 21 律りっ法ぱふの下もとに在ある人々ひとびとを儲まうけん爲ためには、己おのれ律りっ法ぱふの下もとに在あざれども、律りっ法ぱふの下もとにある人々ひとびとに對たいして律りっ法ぱふの下もとに在あが如ごとくに成なり、律りっ法ぱふなき人々ひとびとを儲まうけん爲ためには、己おのれは神かみの律りっ法ぱふなきに非あらずしてキリストの律りっ法ぱふの下もとに在あども、律りっ法ぱふなき人々ひとびとに對たいして律りっ法ぱふなき者ものの如ごとくに成なり、 22 弱よわき人々ひとびとを儲まうけん爲ためには、弱よわき者ものに對たいして弱よわき者ものと成なり、如何いかにもして數す人にんを救すくはん爲ためには、衆しゅう人じんに對たいして如何いかなる者ものにも成なれり。 23 我わが如何いかなる事ことをも福音ふくいんの爲ためにするは、其その分ぶんに與あづからんとてなり。

 第六項 此理を應用して獻身を勸む。

24 汝なんぢ等ら知しらずや、競きゃう走さうの場ばを走はしる人ひとは悉ことごとく走はしると雖いへども、賞しゃうを受うくるは一人ひとりのみ、汝なんぢ等ら受うけ得うべき様やうに走はしれ。 25 総すべて勝しょう負ぶを爭あらそふ人ひとは萬ばん事じを節ひかへ愼つつしむ、而しかも彼かれ等らは朽くつる冠かんむりを得えんとするに、我われ等らは朽くちざる冠かんむりを得えんとす。 26 故ゆゑに我わが走はしるは目もく的てきなきが如ごとくには非あらず、我わが戰たたかふは空くうを擊うつが如ごとくには非あらず、 27 而しかも我われわが體からだを打うちて之これを奴ど隷れいたらしむ、是こは他た人にんを敎をしへて自みづから棄すてられん事ことを懼おそるればなり。