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第11章 (マテオ聖福音書)

  第五款 イエズス及洗者ヨハネ。

1 斯かくてイエズス十二の弟子でしに命めいじ畢をはり給たまひて、彼かれ等らの町々まちまちに敎をしへ且かつ説敎せっけうせんとて、其處そこを去さり給たまひしが、 2 ヨハネは監かん獄ごくに在ありてキリストの業わざを聞ききしかば、其その弟子でしの二人ふたりを遣つかはして、 3 彼かれに云いはしめけるは、來きたるべき者ものは汝なんぢなるか、或あるひは我われ等らの待まてる者もの尚なほ他ほかに在あるか、と。 4 イエズス彼かれ等らに答こたへて曰のたまひけるは、往ゆきて汝なんぢ等らの聞きき且かつ見みし所ところをヨハネに告つげよ、 5 瞽者めしひは見みえ、跛者あしなえは歩あゆみ、癩らい病びゃう者しゃは潔きよくなり、聾者みみしひは聞きこえ、死し者しゃは蘇よみがへり、貧ひん者しゃは福音ふくいんを聞きかせらる、 6 斯かくて我われに就つきて躓つまづかざる人ひとは福さいはひなり、と。
7 彼かれ等らの去さるや、イエズス ヨハネの事ことを群ぐん衆しゅうに語かたり出いで給たまひけるは、汝なんぢ等ら何なにを見みんとて荒あれ野のに出いでしぞ、風かぜに動うごかさるる葦よしか。 8 然しからば何なにを見みんとて出いでしぞ、柔やはらかき物ものを着きたる人ひとか、看みよ、柔やはらかき物ものを着きたる人々ひとびとは帝てい王わうの家いへに在あり。 9 然しからば何なにを見みんとて出いでしぞ、預よ言げん者しゃか、我われ汝なんぢ等らに告つぐ、然しかり、預よ言げん者しゃよりも優まされる者ものなり。 10 錄かきしるして「看みよ、我われ使つかひを汝なんぢの面めん前ぜんに遣つかはさん、彼かれ汝なんぢに先さきだちて汝なんぢの道みちを備そなふべし」とあるは、彼かれが事ことなり。 11 我われ誠まことに汝なんぢ等らに告つぐ、婦をんなより生うまれたる者ものの中うちに、洗せん者しゃヨハネより大おほいなる者ものは未いまだ曾かつて起おこらず、然されど天てん國こくにて最もっとも小ちひさき人ひとも、彼かれよりは大おほいなり。 12 洗せん者しゃヨハネの日ひより今いまに至いたりて、天てん國こくは暴ばう力りょくに襲おそはれ、暴ばう力りょくの者もの之これを奪うばふ、 13 其そは諸もろもろの預よ言げん者しゃと律法りっぱうとの預よ言げんしたるは、ヨハネに至いたる迄までなればなり。 14 汝なんぢ等ら若もし曉さとらんと欲ほっせば、彼かれは來きたるべきエリアなり。 15 聽きく耳みみを持もてる人ひとは聽きけ。
16 現げん代だいを誰たれに比たとへんか、恰あたかも衢ちまたに坐ざせる童わらべが友とも等だちに叫さけびて、 17 我われ等ら汝なんぢ等らの爲ために笛ふえ吹ふきたれども汝なんぢ等ら踊をどらず、我われ等ら歎なげきたれども汝なんぢ等ら悲かなしまざりき、と云いふに似にたり。 18 蓋けだしヨハネ來きたりて飮いん食しょくせざれば、惡あく魔まに憑つかれたりと云いはれ、 19 人ひとの子こ來きたりて飮いん食しょくすれば、看みよ彼かれは食しょくを貪むさぼり酒さけを飮のむ人ひとにて、税吏みつぎとり及および罪つみ人びとの友ともなり、と云いはる。 然さりながら智ち慧ゑは其その子こ等らに義ただしとせられたり、と。

  第六款 不信仰の報と信仰の報。

20 然さてイエズス、奇き蹟せきの多おほく行おこなはれたる町々まちまちの改心かいしんせざるによりて、之これを責せめ始はじめ給たまひけるは、 21 禍わざはひなる哉かな汝なんぢコロザイン、禍わざはひなる哉かな汝なんぢベッサイダ。 蓋けだし汝なんぢ等らの中うちに行おこなはれし奇き蹟せき、若もしチロとシドンとの中うちに行おこなはれしならば、彼かれ等らは夙つとに改心かいしんして、荒あらき毛け衣ごろもを纏まとひ灰はひを蒙かうむりしならん。 22 然されば我われ汝なんぢ等らに告つぐ、審しん判ぱんの日ひに於おいて、チロとシドンとは汝なんぢ等らよりも忍しのび易やすからん。 23 カファルナウムよ、汝なんぢも何なんぞ天てんにまで上あげられんや、當まさに地ぢ獄ごくにまでも陥おちいるべし。 蓋けだし汝なんぢの中うちに行おこなはれし奇き蹟せき、若もしソドマに行おこなはれしならば、彼かれは必かならずず今こん日にちまで猶なほ遺のこりしならん。 24 然されば我われ汝なんぢ等らに告つぐ、審しん判ぱんの日ひに於おいて、ソドマの地ちは汝なんぢよりも忍しのび易やすからん、と。
25 其その時ときイエズス復また曰のたまひけるは、天てん地ちの主しゅなる父ちちよ、我われ汝なんぢを稱しょう讚さんす、其そは是これ等らの事ことを學がく者しゃ 智ち者しゃに隱かくして、小ちひさき人々ひとびとに顯あらはし給たまひたればなり。 26 然しかり父ちちよ、斯かくの如ごときは御み意こころに適かなひし故ゆゑなり。 27 一切いっさいの物ものは我わが父ちちより我われに賜たまはれり、父ちちの外ほかに子こを知しる者ものなく、子こ及および子こより肯あへて示しめされたらん者ものの外ほかに、父ちちを知しる者ものなし。
28 我われに來きたれ、總すべて勞らう苦くして重おも荷にを負おへる者ものよ、我われは汝なんぢ等らを回くわい復ふくせしめん。 29 我われは柔にう和わにして心こころ謙遜けんそんなるが故ゆゑに、汝なんぢ等ら自みづから我わが軛くびきを取とりて我われに學まなべ、然しからば汝なんぢ等らの魂たましひに安息やすみを得うべし。 130 其そは我わが[負おはする]軛くびきは快こころよく、荷には輕かろければなり。