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第11章 (使徒行録}

   第三 エルザレムの信徒ペトロの所置を非難し後之を賞賛す。

1 異い邦はう人じんも神かみの御おん言ことばを請うけ容いれし事こと、使し徒と等たち及およびユデアに在ある兄きゃう弟だい等たちに聞きこえしかば、 2 ペトロがエルザレムに上のぼるや、割かつ禮れいある人々ひとびと之これを詰なじりて、 3 言いひけるは、汝なんぢ何なんぞ無む割かつ禮れいの人ひとの中うちに入いりて共ともに食しょくせしや、と。
4 ペトロ事ことの次し第だいを説とき出いだして云いひけるは、 5 我われヨッペの町まちに在ありて祈いのり居をりしに、氣きを奪うばはるる如ごとくにして幻影まぼろしに遇あひしが、大おほいなる布ぬのの如ごとき器うつは物ものの四よ隅すみを吊つるされつつ天てんより降くだりて我わが許もとに來きたるを見み、
6 熟つらつら其その中なかを眺ながむるに、地ち上じゃうの四よつ足あしのもの、野や獸じう、爬蟲はふもの、及および空そらの鳥とりあるを見みたり。 7 又また、ペトロ起おきよ、屠ほふりて食しょくせよ、と我われに謂いへる聲こゑをも聞ききたれば、 8 我われ、主しゅよ、然しからじ、穢けがれたるもの潔きよからぬものは曾かつて我わが口くちに入いりし事ことなし、と言いひしに、 9 再ふたたび天てんより聲こゑありて、神かみの潔きよめ給たまひしものを汝なんぢ潔きよからずと言いふこと勿なかれ、と答こたへ、 10 三み度たびまで斯かくの如ごとくなりしが、終つひに其その物もの皆みなまた天てんに引ひき上あげられたり。 11 折をりしもカイザリアより、我わが許もとに遣つかはされたる者もの三さん人にん、我わが居をる家いへに立たち止とどまりしかば、 12 躊躇ちうちょする事ことなく彼かれ等らと共ともに往ゆけ、と[聖せい]靈れい我われに曰のたまへり。斯かくて此この六ろく人にんの兄きゃう弟だいも我われに伴ともなひ來きたり、一行いっかう彼かの人ひとの家いへに入いりたるに、 13 彼かれ、天てん使しの己おのが家いへに立たちて、己おのれに次つぎの如ごとく言いふを見みし次し第だいを語かたれり。即すなはち、人ひとをヨッペに遣つかはして、ペトロと呼よばるるシモンを招まねけ、 14 彼かれは汝なんぢ及および汝なんぢが一家いっかの救たすかるべき御おん言ことばを汝なんぢに語かたらん、と。 15 然しかるに我わが語かたり出いづるや、最さい初しょ我われ等らの上うへに降くだり給たまひし如ごとく、聖せい靈れい彼かれ等らの上うへに降くだり給たまひたれば、 16 我わが主しゅが曾かつて、ヨハネは水みづにて洗せんしたるに汝なんぢ等らは聖せい靈れいにて洗せんせられん、と曰のたまひし御おん言ことばを思おもひ出いだせり。 17 即すなはち神かみ旣すでにイエズス、キリストを信しん仰かうせる我われ等らと同どう様やうなる恩おん寵ちょうを彼かれ等らにも賜たまひしを、我われ抑そもそも誰たれなれば、神かみに禁きんずる事ことを得うべかりしぞ、と。
18 人々ひとびと是これ等らの事ことを聞ききて默もく然ぜんたりしが、又また神かみに光くわう榮えいを歸きし奉たてまつりて云いひけるは、然されば神かみは、生命せいめいを得えさせん爲ために、異い邦はう人じんにも改心かいしんを賜たまひしなり、と。

  第四 アンチオキアの教会の開始。

19 抑そもそもステファノの時とき起おこりし迫はく害がいの爲ために離り散さんしたりし人々ひとびとは、フェニケア[州しう]、クプロ[島じま]、及およびアンチオキア[市し]まで廻めぐり行ゆきしも、ユデア人じんの外ほか誰たれにも御おん言ことばを語かたらざりしが、 20 彼かれ等らの中うちにクプロ及およびクレネの人々ひとびとありて、アンチオキアに入いりしかば、ギリシア人じんにも語かたりて、主しゅイエズスの事ことを告つげ、 21 主しゅの御おん手て彼かれ等らと共ともに在ありければ、數多あまたの人ひと信しんじて主しゅに歸き依えせり。
22 是これ等らの沙さ汰たエルザレムなる敎けう會くわいの耳みみに入いりしかば、バルナバを遣つかはしてアンチオキアまで至いたらしめしに、 23 彼かれ至いたりて神かみの恩おん寵ちょうを見みて喜よろこび、決けつ心しんして主しゅに止とどまらん事ことを一同いちどうに勸すすめ居ゐたり。 24 蓋けだし彼かれは善ぜん人にんにして聖せい靈れいと信しん仰かうとに充みてる人ひとなりければ、夥おびただしき群ぐん衆しゅう主しゅに屬つけり。
25 然さてバルナバ、サウロを尋たづねんとてタルソに至いたり、之これに遇あひてアンチオキアに伴ともなひ行ゆき、 26 兩りゃう人にん彼處かしこの敎けう會くわいに滿まん一いち年ねんを過すごして、夥おびただしき群ぐん衆しゅうを敎をしへたり。斯かくて弟子でし等たちはアンチオキアに於おいて、始はじめて基督信徒キリシタンと呼よばるるに至いたれり。
27 其その時とき或ある預よ言げん者しゃ等たち、エルザレムよりアンチオキアに至いたりしが、 28 彼かれ等らの中うちより一人ひとりのアガポと云いへる者もの起たちて、大だい飢き饉きんの全ぜん世せ界かいに起おこるべき事ことを、聖せい靈れいによりて告つげ居ゐたりけるに、果はたしてクロウヂオ[皇くわう帝てい]の時じ代だいに起おこりしかば、 29 弟子でし等たち各おのおの力ちからに應おうじてユデアに住すめる兄きゃう弟だいに補ほ助じょを贈おくらん事ことを定さだめ、 30 遂つひに之これを遂とげて、バルナバとサウロとの手てに托たくして長ちゃう老らう等たちに贈おくれり。