26_02

第20章 (マテオ聖福音書)

1 天てん國こくは恰あたかも、家か父ふ朝あさ早はやく出いでて、其その葡ぶ萄だう畑ばたけの爲ために働はたらく者ものを雇やとうが如ごとし。 2 彼かれ働はたらく者ものに一日にち一デナリオの約やく束そくを爲なして、之これを葡ぶ萄だう畑ばたけに遣つかはししが、 3 又また九時じ頃ごろ出いでて、空むなしく市いち場ばに立たてる他たの人々ひとびとを見みて、 4 汝なんぢ等らも我わが葡ぶ萄だう畑ばたけに往ゆけ、正せい當たうの物ものを與あたへん、と云いひければ彼かれ等ら即すなはち往ゆけり。 5 然さて十二時じと三時じ頃ごろと出いでて、又また同おなじ様やうに爲なししが、 6 五時じ頃ごろ又また出いでて、他ほかの立たてる人々ひとびとに遇あひて、何なんぞ終しゅう日じつ空むなしく此處ここに立たてる、と云いひしに、 7 彼かれ等ら、雇やとふ人ひとなき故ゆゑなり、と云いひしかば、彼かれ、汝なんぢ等らも我わが葡ぶ萄だう畑ばたけに往ゆけ、と云いへり。 8 然しかるに日にち没ぼつに至いたりて、葡ぶ萄だう畑ばたけの主ぬし其その會くわい計けい役やくに向むかひ、働はたらく者ものを呼よびて、後あとの者ものより始はじめ、先さきの者ものに至いたるまで賃ちん金きんを與あたへよ、と云いひしかば、 9 五時じ頃ごろ來きたりし者もの至いたりて、各おのおの一デナリオを受うけたり。 10 先さきの者ものも亦また來きたりて、我われ等らは多おほく受うくるならんと思おもひしに、同おなじく各おのおの一デナリオを受うけたれば、 11 之これを受うけ取とりつつ家か父ふに向むかひて呟つぶやき、 12 彼かの人々ひとびとは一時じ働はたらきしのみなるに、汝なんぢは終しゅう日じつの勞らう苦くと暑しょ氣きとを忍しのびし我われ等らと均ひとしく之これを遇あしらへり、と云いひければ、 13 家か父ふ其その一人ひとりに答こたへて、友ともよ、我われ汝なんぢに不ふ義ぎを爲なすに非あらず、汝なんぢは銀ぎん一枚まいにて我われに約やくせしにあらずや、 14 汝なんぢの分ぶんを取とりて往ゆけ。 我われは此この後あとの者ものにも、亦また汝なんぢと齊ひとしく與あたへんと欲ほっす。 15 抑そもそも又また我わが欲ほっする所ところを爲なすは善よからざるか、我わが善よければとて汝なんぢの目め惡あしきか、と云いひしが、 16 斯かくの如ごとく後あとの人ひとは先さきになり、先さきの人ひとは後あとにならん。 夫それ召めされたる人ひとは多おほけれども、選えらまるる人ひとは少すこなし、と。
17 イエズス エルザレムに上のぼり給たまふに、竊ひそかに十二人にんの弟子でしを呼よび寄よせて曰のたまひけるは、 18 今いまや我われ等らエルザレムに上のぼる、然さて人ひとの子こは司し祭さい長ちゃう 律法りっぱう學がく士し等らに付わたされん、彼かれ等らは之これを死し罪ざいに處しょし、 19 又また異い邦はう人じんに付わたして弄なぶらしめ、且かつ鞭むちうたしめ、且かつ十じふ字じ架かに釘つけしめん、斯かくて三日みっか目めに蘇よみがへるべし、と。
20 時ときにゼベデオの子こ等らの母はは、其その子こ等らと共ともにイエズスに近ちかづき、禮拜れいはいして何なに事ごとかを願ねがはんとしければ、 21 イエズス、何なにを望のぞむか、と曰のたまひしに彼かれ云いひけるは、此この我わが二人ふたりの子こを、御み國くにに於おいて一人ひとりは汝なんぢの右みぎに、一人ひとりは左ひだりに坐ざすべく命めいじ給たまへ。 22 イエズス答こたへて曰のたまひけるは、汝なんぢ等らは願ねがふ所ところを知しらず、汝なんぢ等ら我わが飮のまんとする杯さかづきを飮のみ得うるか、と。彼かれ等ら得うるなり、と云いひしかば、 23 イエズス彼かれ等らに曰のたまひけるは、汝なんぢ等ら實まことに我わが杯さかづきを飮のまん、然されど我わが右みぎ左ひだりに坐ざするは、我わが汝なんぢ等らに與あたふべきに非あらず、我わが父ちちより備そなへられたる人々ひとびとにこそ與あたふべきなれ、と。
24 斯かくて十人にんの弟子でし之これを聞ききて、二人ふたりの兄きゃう弟だいを憤いきどほりければ、 25 イエズス彼かれ等らを呼よび寄よせて曰のたまひけるは、異い邦はう人じんの君くん主しゅが人ひとを司つかさどり、大おほいなる者もの人ひとの上うへに權けんを振ふるふは汝なんぢ等らの知しる所ところなり。 26 汝なんぢ等らの中うちには然しかあるべからず、汝なんぢ等らの中うちに大おほいならんと欲ほっする人ひとは、却かへって汝なんぢ等らの僕しもべとなるべし、 27 又また汝なんぢ等らの中うちに第だい一の者ものたらんと欲ほっする人ひとは、汝なんぢ等らの奴ど隷れいとなるべし。 28 是これ恰あたかも人ひとの子この來きたれるは仕つかへらるる爲ために非あらずして、却かへって仕つかへん爲ため、且かつ衆しゅう人ひとの贖あがなひとして生命いのちを棄すてん爲ためなるが如ごとし。
29 一行いっかうエリコを出いでづる時とき、群ぐん衆しゅう夥おびただしくイエズスに從したがひしが、 30 折をりしも路みち傍ばたに坐ざせる二人ふたりの瞽者めしひ、イエズスの過すぎ給たまふを聞きき、主しゅよ、ダヴィドの裔こよ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ、と叫さけびければ、 31 群ぐん衆しゅう彼かれ等らを拒こばみて默もくせしめんとすれども、彼かれ等ら益ますます叫さけびて、主しゅよ、ダヴィドの裔こよ、我われ等らを憐あはれみ給たまへ、と云いひ居をれり。 32 イエズス立たち止とどまり、彼かれ等らを呼よびて曰のたまひけるは、我われ汝なんぢ等らに何なにを爲なさん事ことを欲ほっするか、と。 33 彼かれ等ら、主しゅよ我われ等らが目めの開ひらかれん事ことを、と云いひしに、 34 イエズス彼かれ等らを憐あはれみて其その目めに觸ふれ給たまひしかば、彼かれ等らの目め忽たちまち見みえて、イエズスに從したがへり。