第十一カフィズマ
アサフの教訓。
1 我が民よ、我が法を聽き、爾の耳を我が口の言に傾けよ。
2 我口を啓きて譬を言ひ、古よりの隱語を述べん。
3 我等が聞きし所、我が列祖が我等に傳へし所を、
4 其子孫に隱さずして、主の光榮と其權能と其行ひし奇迹とを後世に宣べん。
5 彼は證詞をイアコフの中に立て、律法をイズライリの中に置きて、我が列祖に之を其諸子に傳へんことを命じたり、
6 將來の世、卽生れんとする諸子が此を識り、其期に及びて之を亦其諸子に傳へん爲、
7 彼等が己の望を神に負はせ、神の作爲を忘れず、彼の誡を守りて、
8 己の列祖、卽頑固叛逆の世、其心修らず、其靈神に忠ならざる者に效はざらん爲なり。
9 エフレムの諸子、武具を備へ弓を挽く者は、戰の日に退けり。
10 彼等は神の約を守らず、
11 其法を行ふを辞み、其作爲と其顯しし奇迹を忘れたり。
12 神は奇迹を後世彼等が列祖の目の前にエギペトの地に、ツォアンの野に行へり、
13 海を分ちて彼等に此を過らしめ、水の壁の如く立てたり、
14 晝は雲を以て彼等を導き、終夜火の光を以て導けり、
15 石を野に裂き、彼等に飮ましめしこと大なる淵よりするが如し、
16 磐より流れ出し、水は河の如く流れたり。
17 然れども彼等は仍其前に罪を行ひ、至上者を野に慍らせたり。
18 心の中に神を試み、己の意に適する食を求めたり、
19 神を侮りて曰へり、神豈に筵を野に設くるを得んや、
20 視よ、彼石を撃てば水出で、川流れたり、彼猶能く餅を與ふるか、能く己の民に肉を備ふるか。
21 主は之を聞きて怒を發し、火はイアコフに燃え、怒はイズライリに動けり、
22 其神を信ぜず、彼の救を恃まざりしに緣る。
23 彼は上なる雲に命じ、天の門を開き、
24 マンナを雨らして彼等の食となし、天の糧を彼等に與へたり。
25 人は天使の糧を食へり、神は食を遣して彼等に飽かしめたり。
26 彼は東風を天に起し、己の能力を以て南風を引き至らしめて、
27 彼等に肉を雨らすこと塵の如く、飛ぶ鳥を雨らすこと海の砂の如し、
28 之を其營中に、其住所の四周に墜せり、
29 彼等は食ひて饜き足れり、神は彼等の願ふ所を予へたり。
30 唯彼等の慾未だ去らず、食の尚其口にある時、
31 神の怒は彼等に臨みて、其肥えたる者を戮し、イズライリの少き者を仆せり。
32 然れども彼等仍罪を犯し、其奇迹を信ぜざりき。
33 故に神は彼等の日を空虛に、其歳を惶擾に終へしめたり。
34 神が彼等を戮す時、彼等は神を尋ねて之に向ひ、早朝より之に趨り附き、
35 神は彼等の避所、至上の神は彼等を援くる者なるを記憶し、
36 其口を以て彼に諂ひ、其舌を以て彼の前に譌れり、
37 唯其心彼の前に正しからず、彼等は神の約に誠ならざりき。
38 然れども慈憐なる神は罪を赦して、彼等を滅さず、屢其怒を轉じて、其悉くの憤を起さざりき、
39 神は彼等が肉身にして、去りて返らざる気なるを記念せり。
40 彼等は幾次か彼を曠野に憂ひしめ、彼を荒地に慍らせたり。
41 復新に神を試み、イズライリの聖なる者を犯せり、
42 其手、其彼等を苦難より救ひし日を憶はざりき、
43 卽神は其休徴をエギペトに、其奇迹をツォアンの野に行ひし日なり。
44 彼等の河と流とを血に變じて、之を飮む能はざらしめたり。
45 蟲を遣して彼等を螫さしめ、蛙を遣して彼等を害せしめたり。
46 彼等が地の産する所を螟蛉に與へ、其苦勞を蝗に與へたり。
47 霰を以て彼等の葡萄を壞り、雹を以て其無花果を壞れり。
48 彼等の家畜を霰に付し、其牧群を電に付せり。
49 彼等に己の怒の焰、憤と恨と禍と、惡使者の群を遣せり。
50 己の怒の爲に途を平にし、彼等の靈を死より護らず、其家畜を疫病に付せり。
51 凡そエギペトの首生の者、ハムの幕の力の始なる者を撃てり。
52 是に於て其民を羊の如く引き、之を牧群の如く野に引けり、
53 安然に之を引きて、彼等懼るるなし、彼等の敵は海之を覆へり。
54 彼等を引きて其聖なる界、卽其右の手の獲し所の此の山に至れり。
55 諸民を彼等の面より逐ひ、其地を分ちて彼等の業となし、イズライリの支派を其幕に居らしめたり。
56 然れども彼等は猶至上の神を試みて、之を憂ひしめ、其律を守らず、
57 彼等の先祖の如く離れて叛き、歪へる弓の如く翻へれり。
58 崇邱を以て彼を憂ひしめ、偶像を以て彼の嫉妒を起せり。
59 神聞きて怒を發し、大にイズライリを憤れり、
60 シロムの住所、卽彼が人々の間に居りし所の幕を棄て、
61 其力を俘にせしめ、其光榮を敵の手に與へ、
62 其民を劔に付し、其業に怒を發せり。
63 彼等の少者は、火之を噛み、彼等の處女は、人其爲に婚姻の歌を歌はず、
64 彼等の司祭は劔に仆れ、彼等の寡婦は泣かざりき。
65 然れども主は寝ぬる者の覺むるが如く興き、英雄の酒に勵まさるるが如く起ちて、
66 彼等の敵を後より撃ちて、永く之を辱しめたり。
67 又イオシフの幕を棄て、エフレムの支派を選ばず、
68 乃イウダの支派、其愛する所のシオン山を擇べり。
69 其聖所を建てしこと天の如く、永く此を固めしこと地の如し。
70 其僕ダワィドを選びて、之を羊の牢より取り、
71 乳を哺まする羊より牽き來りて、其民イアコフ、其業イズライリを牧せしめたり。
72 彼は淨き心を以て之を牧し、智なる手を以て之を導けり。