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第19章 (マテオ聖福音書)

 第四項 イエズス エルザレムへの最後の旅行。

1 是これ等らの談ものがたりを畢をはりて、イエズス遂つひにガリレアを去さり、ヨルダン[河がは]の向むかひなるユデアの境さかひに至いたり給たまひしが、 2 群ぐん衆しゅう夥おびただしく之これに從したがひければ、其處そこにて彼かれ等らを醫いやし給たまへり。
3 ファリザイ人じん近ちかづきて、彼かれを試こころみて云いひけるは、如何いかなる理り由いうの下もとにも、人ひとは其その妻つまを出いだすを得うべきか。 4 イエズス答こたへて曰のたまひけるは、汝なんぢ等ら讀よまざりしか、即すなはち元始はじめに人ひとを造つくり給たまひしもの、之これを男だん女じょに造つくりて曰のたまはく、 5 「此この故ゆゑに、人ひとは父ちち母ははを離はなれて、其その妻つまに就つき兩りゃう人にん一軆いったいと成なるべし」と、 6 然されば旣すでに二人ふたりに非あらずして一軆いったいなり、故ゆゑに神かみの配あはせ給たまひしもの、人ひと之これを分わかつべからず、と。 7 ファリザイ人じん云いひけるは、然しからば離り緣えん狀じゃうを與あたへて妻つまを出いだすべし、とモイゼの命めいぜしは何なんぞや。 8 答こたへて曰のたまひけるは、モイゼは汝なんぢ等らの心こころの頑固かたくななるが爲ために、妻つまを出いだす事ことを汝なんぢ等らに許ゆるしたれど、元始はじめより然さはあらざりき。 9 即すなはち我われ汝なんぢ等らに告つぐ、總すべて私し通つうの故ゆゑならで其その妻つまを出いだし、他ほかの女をんなを娶めとる人ひとは姦淫かんいんするなり、又また出いだされたる女をんなを娶めとる人ひとも姦淫かんいんするなり、と。 10 弟子でし等たちイエズスに向むかひ、若もし人ひとの妻つまに於おける事こと斯かくの如ごとくば、娶めとらざるに若しかず、と云いひしかば、 11 イエズス曰のたまひけるは、人ひと皆みな此この言ことばを肯うけ容いるるには非あらず、[肯うけ容いるるは]賜たまはりたる者もののみ。 12 即すなはち母ははの胎たい内ないより生うまれながらの閹えん者じゃあり、人ひとより爲ためられたる閹えん者じゃあり、又また天てん國こくの爲ために自みづからら作なせる閹えん者じゃあるなり。 肯うけ容いるるを得うる人ひとは肯うけ容いるべし、と。
13 時ときに按あん手しゅして祈いのられんが爲ため、孩兒をさなご等らイエズスに差さし出いだされしが、弟子でし等たち之これを拒こばみければ、 14 イエズス彼かれ等らに曰のたまひけるは、孩兒をさなご等らを容ゆるせ、其その我われに來きたるを禁きんずること勿なかれ、天てん國こくは斯かくの如ごとき人ひとの爲ためなればなり、と。 15 斯かくて彼かれ等らに按あん手しゅし給たまひ、さて此處ここを去さり給たまへり。 16 折をりしも一人ひとり[の青せい年ねん]イエズスに近ちかづきて云いひけるは、善よき師しよ、我われ永えい遠ゑんの生命せいめいを得えんには、如何いかなる善よき事ことをか爲なすべき。 17 イエズス曰のたまひけるは、何なんぞ善よきを我われに問とふや、善よき者ものは獨ひとりのみ、即すなはち神かみなり。 但ただ汝なんぢ若もし生命せいめいに入いらんと欲ほっせば掟おきてを守まもれ、と。 18 彼かれ、何いづれ[の掟おきて]ぞや、と云いひしにイエズス曰のたまひけるは、汝なんぢ人ひとを殺ころす勿なかれ、姦淫かんいんする勿なかれ、偸盗ぬすみする勿なかれ、僞ぎ證しょうする勿なかれ、 19 汝なんぢの父ちち母ははを敬うやまへ、又また汝なんぢの近ちかき者ものを己おのれの如ごとく愛あいせよ、と。 20 青せい年ねん云いひけるは、是これ皆みな我われ幼年えうねんより守まもりし所ところ、猶なほ我われに缼かけたるは何なんぞや。 21 イエズス曰のたまひけるは、汝なんぢ若もし完くわん全ぜんならんと欲ほっせば、往ゆきて有もてる物ものを賣うり、之これを貧ひん者しゃに施ほどこせ、然しからば天てんに於おいて寳たからを得えん、而しかして來きたりて我われに從したがへ、と。 22 此この言ことばを聞きくや青せい年ねん憂うれひて去されり、是これ多おほくの財ざい產さんを有もてる者ものなればなり。 23 イエズス弟子でし等たちに曰のたまひけるは、我われ誠まことに汝なんぢ等らに告つぐ、富ふう者しゃは天てん國こくに入いり難がたし、 24 又また汝なんぢ等らに告つぐ、駱らく駝だが針はりの孔あなを通とほるは、富ふう者しゃの天てん國こくに入いるよりも易やすし、と。 25 弟子でし等たち聞ききて甚はなはだ怪あやしみ、然しからば誰たれか救すくはるるを得えん、と云いひければ、 26 イエズス彼かれ等らを凝視みつめつつ曰のたまひけるは、是これ人ひとに於おいては能あたはざる所ところなれども、神かみに於おいては何なに事ごとも能あたはざる所ところなし、と。
27 其その時ときペトロ答こたへて云いひけるは、然さて我われ等らは一切いっさいを棄すてて汝なんぢに從したがへり、然されば何なにを得うべきぞ、と。 28 イエズス彼かれ等らに曰のたまひけるは、我われ誠まことに汝なんぢ等らに告つぐ、我われに從したがひたる汝なんぢ等らは、世よ革あらたまりて人ひとの子こ其その光くわう榮えいの座ざに坐ざせん時とき、汝なんぢ等らも十二の座ざに坐ざして、イスラエルの十二族ぞくを審さばくべし。 29 又また總すべて我わが名なの爲ために、或あるひは家いへ、或あるひは兄きゃう弟だい、或あるひは姉し妹まい、或あるひは父ちち、或あるひは母はは、或あるひは妻つま、或あるひは子こ等ども、或あるひは田た畑はたを離はなるる人ひとは百ひゃく倍ばいを受うけ、且かつ永えい遠ゑんの生命せいめいを得うべし。 30 但ただ多おほく、先さきなる人ひとは後あとになり、後あとなる人ひとは先さきにならん。