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第11章 (ロマ書}

  第三款 イスラエル人に取りての大いなる慰。

1 然しからば我われは言いはん、神かみは其その民たみを棄すて給たまひしかと、然しからず、其そは我われもイスラエル人じんにして、アブラハムの裔すゑ、ベンヤミンの族ぞくなればなり。 2 神かみは豫よ知ちし給たまひし己おのれの民たみを棄すて給たまはざりしなり。汝なんぢ等らエリアに就つきて聖せい書しょの曰いへる事ことを知しらざるか、即すなはち彼かれイスラエル人じんを神かみに訟うったへて言いへらく、 3 「主しゅよ、彼かれ等らは主しゅの預よ言げん者しゃ等たちを殺ころし、悉ことごとく主しゅの祭さい壇だんを毀こぼてり、然さて我われ一人ひとり殘のこれるに、尚なほ我わが命いのちを求もとめんとするなり」と。 4 而しかして神かみの御おん答こたへに何なにと曰のたまへるぞ、「我われは己おのれの爲ために、バアルの前まへに跪ひざまつかざる七千の男だん子しを殘のこしたるなり」と。 5 斯かくの如ごとく、今いまの時ときも亦また恩おん寵ちょうの擇えらみに由よりて殘のこれる者ものは救すくはれたり。 6 恩おん寵ちょうに由よれば業わざに由よるに非あらず、然しからざれば恩おん寵ちょうは最も早はや恩おん寵ちょうに非あらざるべし。 7 然しからば何なんぞや、イスラエル人じんは其その求もとめ居をたりし所ところを得えず、擇えらまれたる人ひとは之これを得えて、他たの人ひとは頑固かたくなになれり。 8 録かきしるして、「神かみは彼かれ等らに茫ばう然ぜんたる精せい神しん、見み得うべからざる目め、聞きき得うべからざる耳みみを賜たまひて今こん日にちに至いたる」、とあるが如ごとし。 9 ダヴィド又また曰いはく「願ねがはくは彼かれ等らの食しょく卓たく、網あみとなり、罠わなとなり、躓つまづくものとなり、報むくいとなれかし、 10 其その目めは眩くらみて見みえざらしめ、其その背せは何い時つも屈かがましめ給たまへ」、と。
11 然されば我われは言いはん、彼かれ等らの躓つまづきしは倒たふれん爲ためなるかと、然しからず、却かへって彼かれ等らを妬ねたましむる様やう、其その墮だ落らくによりて、救すくひは異い邦はう人じんの上うへに來きたれり。 12 若もし彼かれ等らの墮だ落らくが世よの富とみとなり、其その減げん少せうは異い邦はう人じんの富とみとならば、況いはんや彼かれ等らの全ぜん數すうをや。 13 蓋けだし我われ、汝なんぢ等ら異い邦はう人じんに謂いはん、我われ異い邦はう人じんの使し徒とたる間あひだは、我わが[聖せい]役えきに榮えい譽よを來きたさん。 14 是これ如何いかにもして、我わが骨こつ肉にくたる者ものを刺し激げきして之これを励はげまし、其その幾いく何ばくかを救すくはん爲ためなり。 15 蓋けだし彼かれ等らの排はい斥せきが世よの和わ睦ぼくとならば、其その採さい用ようは豈あに死しより再さい生せいするに同おなじからざらんや。 16 若もし麪ぱんの初はつ薦ほ聖せいならば全ぜん體たいも然しかあるべく、根ね聖せいならば枝えだも然しかあるべし。 17 假令たとひ幾いく何ばくかの枝えだ折をられて、野や生せいの橄欖かんらんたりし汝なんぢ之これに接つがれ、橄欖かんらんの根ねと液えき汁じふとを共ともにするものとなりたりとも、 18 枝えだに向むかひて誇ほこること勿なかれ、誇ほこらんとするも、汝なんぢが根ねを保たもつに非あらずして根ねこそ汝なんぢを保たもつなれ。 19 汝なんぢ或あるひは言いはん、枝えだの折をられしは我わが接つがれん爲ためなりと。 20 諾よし、彼かれ等らは其その不ふ信しん仰かうに由よりて折をられしに、汝なんぢは信しん仰かうに由よりて立たてるなり。然されど驕たかぶること勿なかれ、却かへって懼おそれよ。 21 蓋けだし神かみは原もと樹きの枝えだを惜おしみ給たまはざりしなれば、恐おそらくは汝なんぢをも惜おしみ給たまはざるべし。
22 然されば神かみの慈じ愛あいと嚴げん格かくとを見みよ、倒たふれし人々ひとびとに對たいしては惟これ嚴げん格かく、汝なんぢに對たいしては惟これ慈じ愛あい、但ただし是これ汝なんぢが其その慈じ愛あいに止とどまればのみ、然しからずんば汝なんぢも取とり除のぞかるべし。 23 彼かれ等らも若もし不ふ信しん仰かうに止とどまらずば接つがるるならん、其そは神かみは再ふたたび之これを接うぐことを得え給たまへばなり。 24 汝なんぢは生せい來らい野や生せいなる橄欖かんらんより切きり取とられ、其その本ほん性せいに反はんして好よき橄欖かんらんに接つがれたれば、況いはんや本ほん性せいのものが原もとの橄欖かんらんに接つがるるをや。
25 兄きゃう弟だい等たちよ、自みづから敏さとしとする事ことなからん爲ために、我われは汝なんぢ等らが此この奥おく義ぎを知しらざるを好このまず、即すなはちイスラエルの幾いく部ぶ分ぶんの頑固かたくなになれるは、異い邦はう人じん全ぜん體たいの入いり來きたるまでなり。 26 斯かくてイスラエルは擧こぞりて救すくはるるに至いたるべし、録かきしるして、「救すくふ者ものシオンに來きたり、ヤコブより不ふ敬けいを去さらしめん。 27 我われ彼かれ等らの罪つみを取とり除のぞきたらん時とき、彼かれ等らと結むすぶべき約やく束そくは是これなり」、とあるが如ごとし。 28 福音ふくいんに就つきては、彼かれ等ら汝なんぢ等らの爲ために敵てきなれども、選せん拔ばつに就つきては其その祖そ先せんの爲ために至し愛あいの者ものなり、 29 其そは神かみの賜たまものと召めしとは、取とり消けさるる事ことなければなり。 30 斯かくて汝なんぢ等らも原もと神かみに從したがはざりしに、今いまや彼かれ等らの不ふ從じゅう順じゅんに由よりて慈じ悲ひを蒙かうむりし如ごとく、 31 今いま彼かれ等らの從したがはざるも亦また汝なんぢ等らの[蒙かうむりし]慈じ悲ひに由よりて己おのれも慈じ悲ひを蒙かうむらん爲ためなり。 32 是これ衆しゅう人じんを憫あはれみ給たまはん爲ために、神かみが之これを不ふ從じゅう順じゅんに籠こめ給たまへるなり。
33 嗚呼ああ高かう大だいなる哉かな、神かみの富とみと智ち慧ゑと智ち識しきと。其その判はん定ていの覺さとり難がたさよ、其その道みちの極きはめ難がたさよ。 34 誰たれか主しゅの御み心こころを知しり、誰たれか之これと共ともに議はかりたるぞ。 35 誰たれか先まづ之これに與あたへて、其その報むくいを得えん者ものぞ。 36 蓋けだし萬ばん事じは彼かれに倚よりて彼かれを以もって彼かれの爲ために在あり、光くわう榮えい世よよ彼かれに歸きす、アメン。