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第8章 (ロマ書}

 第三款 キリストによりて再生したる人の福なる狀態。

1 然さればキリスト、イエズスに在ありて、肉にくに從したがひて歩あゆまざる人ひとに於おいては、最も早はや罪つみに處しょせらるべき所ところなし、 2 其そは生せい命めいを與あたふる靈れいの法のりは、キリスト、イエズスに於おいて罪つみと死しとの法のりより我われを救すくひたればなり。 3 夫それ肉にくを以もって弱よわれるが故ゆゑに、律りっ法ぱふは爲なす能あたはざりしを、神かみは罪つみの肉にくの如ごとき狀かたちを以もって御おん子こを罪つみの爲ために遣つかはし給たまひ、其その肉にくに於おいて罪つみを處しょ分ぶんし給たまへり。 4 是これ肉にくに從したがはず靈れいに從したがひて歩あゆめる我われ等らに於おいて、律りっ法ぱふの禁きん令れいの全まったうせられんが爲ためなり。 5 肉にくに從したがふ人々ひとびとは肉にくの事ことを好このみ、靈れいに從したがふ人々ひとびとは靈れいの事ことを好このむ。 6 肉にくの好このみは死し[と]なり、靈れいの好このみは生せい命めい及および平へい安あん[と]なる。 7 其そは肉にくの好このみは神かみに敵てき對たいして神かみの律りっ法ぱふに服ふくせず、又また服ふくする能あたはざればなり。 8 然されば肉にくに居をる人々ひとびとは、神かみの御み意こころに適かなふ能あたはず。
9 然さて神かみの靈れい若もし汝なんぢ等らに宿やどり給たまはば、汝なんぢ等らは肉にくに居をらずして靈れいに居をるなり。人ひと若もしキリストの靈れいを有いうせずば、キリストのものに非あらず。 10 若もしキリスト汝なんぢ等らに在あさば、肉にく體たいは罪つみの爲ために死ししたるものなれども、靈れいは義ぎとせられたる爲ために活いく。 11 若もしイエズスを死し者しゃの中うちより復ふく活くわつせしめ給たまひし者ものの靈れい汝なんぢ等らに宿やどり給たまはば、其その死しよりイエズス、キリストを復ふく活くわつせしめ給たまひし者ものは、汝なんぢ等らに宿やどり給たまへる其その靈れいによりて、汝なんぢ等らの死しぬべき肉にく體たいをも活いかし給たまはん。 12 然されば兄きゃう弟だい等たちよ、我われ等らは肉にくに對たいして、肉にくに從したがひて活いくべき負ふ債さいある者ものに非あらず、 13 蓋けだし汝なんぢ等ら若もし肉にくに從したがひて活いきなば死しすべく、靈れいを以もって肉にくの業わざを殺ころさば却かへって活いくべし。 14 其そは何なん人びとによらず、神かみの靈れいに導みちびかるる人ひとは神かみの子こたればなり。
15 蓋けだし汝なんぢ等らの受うけしは、更さらに懼おそれを懷いだく奴ど隷れいたるの靈れいに非あらず、子ことせらるる靈れいを受うけしなり。我われ等らがアバ即すなはち父ちちと呼よぶは是これが爲ためなり。 16 蓋けだし[聖せい]靈れい自みづから我われ等らの精せい神しんと共ともに、我われ等らが神かみの子こたるを證しょうし給たまふ。 17 旣すでに子こたれば又また世よ嗣つぎたり、即すなはち神かみの世よ嗣つぎにして、キリストと共きゃう同どうの世よ嗣つぎたるなり。 是これ我われ等らもし共ともに苦くるしまば、光くわう榮えいも亦また共ともに受うくべき爲ためなり。 18 我わが想おもふに現世このよの苦くるしみは、我われ等らが身みの上うへに顕あらはるべき將しゃう來らいの光くわう榮えいに及およびぶものに非あらず、 19 蓋けだし被ひ造ざう物ぶつの仰あふぎて待まてるは、神かみの子こ等らの顕あらはれん事ことを待まてるなり。 20 被ひ造ざう物ぶつは虛むなしきに服ふくせしめられたるも之これを好このまず、己おのれを希き望ばうを以もって服ふくせしめ給たまひしものに對たいして然しかするのみ。 21 其そは被ひ造ざう物ぶつも自みづから腐ふ敗はいの奴ど隷れいたる事ことを脫のがれて、神かみの子こ等らの光くわう榮えいの自じ由いうを得うべければなり。 22 即すなはち我われ等らは知しる、被ひ造ざう物ぶつは皆みな今いまに至いたるまで相あひ共ともに嘆なげき、且かつ陣ぢん痛つうに遇あへるなりと。 23 啻ただに被ひ造ざう物ぶつのみならず、聖せい靈れいの最さい初しょの賜たまものを得えたる我われ等らも、自みづから心こころの中うちに嘆なげき、神かみの子こ等らとせられて肉にく體たいの贖あがなはれん事ことを仰あふぎ待まてるなり。 24 蓋けだし我われ等らの救すくはれたるは猶なほ希き望ばうに止とどまる、見みゆる希き望ばうは希き望ばうに非あらず、旣すでに見みる所ところは人ひと何なんぞ之これを希き望ばうせん。 25 見みざる所ところを希き望ばうするに當あたりては、我われ等らは忍にん耐たいを以もって之これを待まつ。 26 斯かくの如ごとく、聖せい靈れいも亦また我われ等らの弱よわきを援たすけ給たまふ。蓋けだし我われ等ら何なにを祈いのるべきかを知しらざれども、[聖せい]靈れい御おん自みづから言いふべからざる歎なげきを以もって、我われ等らの爲ために求もとめ給たまふ。 27 斯かくて、心こころを見み透とほし給たまふものは[聖せい]靈れいの望のぞみ給たまへる所ところを知しり給たまふ。其そは神かみの御み旨むねに從したがひて、聖せい徒との爲ために求もとめ給たまへばなり。
28 我われ等らは知しれり、神かみを愛あいする者もの即すなはち規き定ていに應おうじて聖せい徒とと召めされたる人々ひとびとには、萬ばん事じ共ともに働はたらきて其その爲ために益えきあらざるはなし、と。 29 蓋けだし神かみは豫よ知ちし給たまへる人々ひとびとを、御おん子この狀すがたに肖似あやからしめんと豫よ定ていし給たまへり、是これ御おん子こが多おほくの兄きゃう弟だいの中うちに長ちゃう子したらん爲ためなり。 30 斯かくて豫よ定ていし給たまひし人ひとには亦また之これを召めし、召めし給たまひし人ひとは亦また之これを義ぎとならしめ、義ぎとならしめ給たまひし人ひとには、亦また賜たまふに光くわう榮えいを以もってし給たまひしなり。 31 是これ等らの事ことに加くはへて我われ等ら又また何なにをか言いはん、神かみもし我われ等らの爲ためにし給たまはば、誰たれか我われ等らに敵てき對たいする者ものぞ、 32 我わが御おん子こをすら惜おしみ給たまはず、却かへって我われ等ら一同いちどうの爲ために之これを付わたし給たまひたれば、爭いかでか之これに添そへて、一切いっさいを我われ等らに賜たまはざらんや。 33 神かみに選えらまれたる人々ひとびとを訟うったふる者ものは誰たれぞ、其そは義ぎとならしめ給たまふ神かみならんか。 34 是これ等らを罪つみに處しょする者ものは誰たれぞ、其そは死しして而しかも復ふく活くわつし、神かみの右みぎに在ましまして尚なほ我われ等らの爲ために執とり成なし給たまふキリスト、イエズスならんか。 35 然さればキリストに對たいする愛あいより、我われ等らを引ひき離はなす者ものは誰たれぞ、是これ苦く難なんならんか、憂うれひか、飢うゑか、裸ら體たいか、危き険けんか、迫はく害がいか、劔つるぎか、 36 録かきしるして「我われ等ら終日ひねもす主しゅの爲ために死しの危き険けんに遇あひ、屠ほふらるべき羊ひつじの如ごとくせらるるなり」とあるが如ごとし。 37 然されど我われ等ら此この凡すべての事ことの中うちに在ありて、我われ等らを愛あいし給たまへる者ものにより、勝かちて尚なほ餘あまあり。 38 蓋けだし我われは確かく信しんす、死しも、生せいも、天てん使しも、權けん勢せいも、能のう力りょくも、現げん在ざいの事ことも、未み來らいの事ことも、(力ちからも)、 39 高たかさも深ふかさも、他たの如何いかなる被ひ造ざう物ぶつも、我わが主しゅイエズス、キリストに於おける神かみの寵いつくしみより、我われ等らを離はなし得うるものなし、と。