26_02

第7章 (マルコ聖福音書)

1 ファリザイ人じん及および數す人にんの律法りっぱう學がく士しエルザレムより來きたりて、イエズスの許もとに集あつまりしが、 2 弟子でしの中うちなる數す人にんの、常じゃうの手て即すなはち洗あらはざる手てにて麪ぱんを食しょくするを見みて、之これを咎とがめたり。 3 是これファリザイ人じん及および凡すべてのユデア人じんは、古こ人じんの傳つたへを守まもりて、屡しばしば手てを洗あらはざれば食しょくせず、 4 又また市いちより來きたる時ときは、身みを洗あらはざれば食しょくせず、其その外ほか杯さかづき、土ど器き、銅どう器き、牀とこの洗あらひ淸きよめ等など、守まもるべき事こと多おほく傳つたへへられたればなり。
5 ファリザイ人じん、律法りっぱう學がく士し等らイエズスに問とひけるは、汝なんぢの弟子でし等たちは何なんぞ古こ人じんの傳つたへに從したがひて歩あゆまず、常つねの手てにて麪ぱんを食しょくするや。 6 答こたへて曰のたまひけるは、善よき哉かなイザヤが僞ぎ善ぜんなる汝なんぢ等らに就つきて預よ言げんしたる事こと、錄かきしるして「此この民たみは唇くちびるにて我われを尊たふとべども、其その心こころは我われに遠とほざかれり。 7 人ひとの訓くん戒かいを敎をしへて、空むなしく我われを尊たふとぶなり」とあるに違たがはず。 8 即すなはち汝なんぢ等らは神かみの掟おきてを棄すてて人ひとの傳つたへを守まもり、土ど器き、杯さかづき等などの洗あらひ淸きよめ、又また然さる類たぐひの事ことを多おほく行おこなふなり、と。 9 又また彼かれ等らに曰のたまひけるは、汝なんぢ等らは己おのが傳つたへを守まもらんとて、能よくも神かみの掟おきてを廢はいせるよ。 10 即すなはちモイゼ曰いはく、「汝なんぢの父ちち母ははを敬うやまへ」と、又また曰いはく「父ちち若もしくは母ははを詛のろう人ひとは死しすべし」と。 11 然さるを汝なんぢ等らは云いふ、人ひともし父ちち若もしくは母ははに向むかひて、總すべて我われよりするコルバン、即すなはち献ささげ物ものは、汝なんぢに益えきとならんと云いはば足たれり、と。 12 而しかして其その外ほかは何なに事ごとをも父ちち若もしくは母ははに爲なすを容ゆるさず。 13 斯かく己おのれの傳つたへし傳つたへによりて神かみの言ことばを廢はいし、又また然さる類たぐひの事ことを多おほく行おこなふなり、と。
14 イエズス再ふたたび群ぐん衆しゅうを呼よび集あつめて、曰のたまひけるは、皆みな我われに聞ききて曉さとれ。 15 外そとより人ひとに入いる物ものは、何なに物ものも人ひとを汚けがす能あたはず、人ひとより出いづる物ものこそ人ひとを汚けがすなれ。 16 聞きく耳みみを有もてる人ひとは聞きけ、と。 17 然さてイエズス、群ぐん衆しゅうを離はなれて家いへに入いり給たまひしに、弟子でし等たち此この喩たとへの事ことを問とひければ、 18 彼かれ等らに曰のたまひけるは、汝なんぢ等らも然さまでに無な智ちなるか。總すべて外そとより人ひとに入いる物ものは、之これを汚けがす能あたはざることを曉さとらざるか。 19 是これ其その心こころに入いるに非あらずして、腹はらに下くだり、總すべて食しょく物もつを淨きよめて厠かはやに出いづればなり、と。 20 又また曰のたまひけるは、人ひとより出いづる物ものこそ人ひとを汚けがすなれ。 21 即すなはち人ひとの心こころの内うちより出いづるは、惡あく念ねん 姦淫かんいん 私し通つう 殺さつ人じん 22 偸盗ぬすみ 貪婪むさぼり 狡猾かうかつ 詐さ僞ぎ 猥わい褻せつ 惡視あしきめ 冒ばう瀆とく 傲がう慢まん 愚ぐ痴ちにして、 23 是これ等ら一切いっさいの惡あく事じは、内うちより出いでて人ひとを汚けがすなり、と。
24 イエズス此處ここを去さりて、チロとシドンとの地ち方はうに行ゆき、家いへに入いりて、誰たれをも見みざらん事ことを欲ほっし給たまひたれど、得え隱かくれ給たまはざりき。 25 即すなはち汚を鬼きに憑つかれたる女むすめを持もてる一人ひとりの婦をんな、イエズスの事ことを聞きくと等ひとしく入いり來きたりて、足あし下もとに平ひれ伏ふせり。 26 此この婦をんなはシロフェニシアに生うまれたる異い邦はう人じんにして、我わが女むすめより惡あく魔まを逐おひ拂はらひ給たまはん事ことを願ねがひ出いでけるに、 27 イエズス曰のたまひけるは、先まづ兒こ等どもをして飽あき足たらしめよ。兒こ等どもの麪ぱんを取とりて犬いぬに投なげ與あたふるは善よき事ことに非あらず、と。 28 婦をんな答こたへて、主しゅよ、然しかり、然されど狗こ兒いぬも、食しょく卓たくの下したに、兒こ等どもの遺おち片くづを食くらふなり、と云いひしに、 29 イエズス曰のたまひけるは、此この言ことばによりて往ゆけ、惡あく魔ま汝なんぢの女むすめより出いでたり、と。 30 婦をんな家いへに歸かへりて見みれば、女むすめは牀とこに橫よこたはりて、惡あく魔まは旣すでに立たち去さりたりき。
31 イエズス又またチロの地ち方はうを出いで、シドンを經へてデカポリ地ち方はうの中ちゅう央おうを過よぎり、ガリレアの湖うみに至いたり給たまひしに、 32 人々ひとびと啞おしにして聾みみしひなる者ものをイエズスに連つれれ來きたり、是これに按あん手しゅし給たまはん事ことを願ねがひければ、 33 イエズス之これを群ぐん衆しゅうの中うちより呼よび取とりて、指ゆびを其その耳みみに入いれ、唾つばきして其その舌したに觸ふれ、 34 天てんを仰あふぎて歎たんじ、エフフェタ、と曰のたまへり、即すなはち開ひらけよの義ぎなり。 35 忽たちまちにして其その耳みみ開ひらけ、舌したの縺もつれ解とけて言ものいふこと正ただしかりき。 36 イエズス之これを人ひとに語かたる事ことを彼かれ等らに戒いましめ給たまひしかど、戒いましめ給たまふほど、人ひとは益ますます言いひ弘ひろめ、 37 益ますます感かん嘆たんして、善よくこそ何なに事ごとをも爲なし給たまひつれ、聾みみしひを聞きこえしめ、啞おしを言ものいはしめ給たまへり、と云いひ居ゐたり。